保険は『損な賭け』って言われるけど、本当にそうなの?損するなら入りたくないんだけど…
保険は上手に使えば切れ味バツグンの武器になりますが、下手に使えばポンコツになります。
この記事では、日常的に保険の見直し相談を受けているFPが、『保険が持つギャンブル性』と、『損しない保険の入りかた』を中学生でも分かるようにやさしく解説します。
生命保険、医療保険、学資保険…いろんな保険がありますが、全てに共通して使える知識です。
わくわくっ
保険はギャンブル性があるので、上手に入ろう
まず、保険とギャンブルは完全にイコールではありません。
でも、ギャンブルにとても似ています。お金の出入りが、不確実性に左右されるからです。
保険とギャンブルの違いとは
たとえば、お金を払って宝くじを買っても、当たらなければ賞金はもらえません。
払ったお金は、損ですね。
たとえば、お金を払って医療保険に入っても、病院にかからなければ保険金はおりません。
これも、払ったお金は損です。
どちらも、お金を払った時点では、将来それ以上のお金がもらえるか不明です。
よく似ていますよね。
ただし、宝くじ(ギャンブル)と保険では、決定的な違いがあります。
なんだろか…?
それは、『目的』の違いだよ。
保険の目的、ギャンブルの目的
まず、ギャンブルの目的は、儲けることです。
(中には、ギャンブルによる精神的熱狂を買うんだ!という人もいますが…)
対して、保険の目的は、リスクをコントロールすることです。
(中には、保険金詐欺でお金を儲けようとする人もいますが…)
もう少し詳しく言うと、「不測の事態で被るリスクに、事前に対処しておくこと」、これが保険の目的です。
具体例で考えてみましょう。
保険は「事前に損を確定させる」効果がある
もし、自動車事故を起こしてしまったら大変ですね。
損害賠償額は億単位になることもあり、とても貯金ではまかなえません。
そこで登場するのが保険です。
自動車保険(任意保険)に入っておけば、事故という不測の事態が起きて、損害賠償というリスクを負うことになっても、保険会社がお金を支払います。
保険会社もタダではお金を払えないので、事故を起こすかもしれない人たちから、ちょっとずつお金を集めて準備しておきます。
このちょっとずつのお金が、ぼくたちが支払う保険料です。
保険料は、自動車事故の損害賠償額よりもハチャメチャに安いですよね。
つまり、事故による莫大な損害賠償というリスクを、保険料という少額のコストを払っておくことで、事前に避けることができます。
これなら、安心して自動車の運転ができますね(もちろん、安全運転で)。
これが、保険の良いところで、存在意義でもあります。
このように、保険は『事前に少額の損を確定させることで、将来の甚大な損を避ける』効果があります。
少額の損を確定…なるほど…
損しない保険の選びかた
そうは言っても、保険は万能ではなく、選び方を間違えると損する可能性も高まります。
なぜなら、保険はリスクをコントロールする『手段のひとつ』に過ぎず、すべてではないからです。
ここをしっかり認識しておかないと、「保険に入りさえすればOK」といった、手段の目的化が起こり得ます。
保険に入らなくても対処できるリスクまで保険で対応してしまうと、保険料というコスト分だけ損してしまいます。
損しない保険を選ぶ手順を知っておきましょう。次のようになります。
- 保険でそなえるべきリスクを知って、
- 自分で100%説明できる保険だけ選ぶ
まずは、「保険でそなえるべきリスク」からいきましょう。
保険でそなえるべき3つのリスク
- めったに起きない
- 起きたら貯金ではどうにもならない
- いつ起きるかわからない
この3つ全てに当てはまるリスクには、保険はめっぽう強いです。
どれか1つとかじゃなくて、3つ全部当てはまるリスクだけ?
うん、3つ全部だよ。
①めったに起きない
レアケースであるほど、支払う保険料が安くなるので合理的です。
これは、保険の仕組みを考えるとよく分かります。
仮に、90%の確率で発症する病気に保険で対応すると、保険会社は加入者の9割にお金を払わなければなりません。
保険会社が自腹を切るわけにもいかないので、必然的に、加入者一人当たりから集めるお金(=保険料)は高くなります。
なので、起こる確率が高いリスクに保険でそなえるのは得策ではありません。
②起きたら貯金ではどうにもならない
貯金でなんとかなるリスクは、貯金で対応しましょう。
たとえば、医療費。公務員や大企業の方が入る健康保険は、ものすごく頼りになります。
高額療養費だけでなく、附加給付という助成制度があるので、医療費の自己負担上限が月額2万円程度になることもあります。
それくらいなら、貯金で対応できそうですよね。ちなみに、リスクに預貯金で対応することを「リスクの保有」と言います。
逆に、上で書いた「自動車事故」なんかは貯金じゃ到底対応できないので、保険で備えるのが合理的な判断になります。
③いつ起きるかわからない
もし、起きる時点がわかっているリスクがあれば、保険以外の対処方法も検討しましょう。
たとえば、必ず訪れる老後。その老後資金を貯める必要があるなら、貯蓄性の保険でなく、確定拠出年金(イデコ)を活用するなどの方法も取れます。
貯蓄性の保険は、支払う保険料の全額が貯蓄されるわけではありません。
死亡保証に回ったり、保険会社の人件費などに回ったりします。しかも、その手数料率が不明です。
その点、イデコの手数料は開示されていますし、所得控除で税金も安くなります。
このように、予測できるリスクなら、保険以外にも対処法を考えることができるよね、ということです。
自分で100%説明できる保険だけ選ぶ
ここまで紹介した3つが、保険で備えるべきリスクです。
備えるべきリスクが分かった後は、選びかたのポイントも知っておきましょう。
『できるだけシンプルで、保険の内容を100%自分で説明できる保険』を選ぶことがポイントです。
なぜなら、複雑な保険だと、無駄な手数料が紛れ込んでいても、素人目には分かりにくいからです。
もっというと、手数料自体が開示されていないこともあります。
手数料隠してあることもあるの…?
開示されていくべきだよね…現状は自衛しよう。
複雑な保険の例
たとえば、次の文章は、金融庁が外貨建て保険の仕組みを説明したものです。
これを読んで保険の内容を理解して、誰かに説明できますか?
仕組みとしては、定額部分を外国政府が発行する債券等で運用し、変額部分を元本保証のない投資信託等で運用。
それに、保険機能として、外貨建の死亡保障を追加。
定額部分の運用で、 運用期間満了時に、当初払い込んだ一時払保険料を外貨建で最低保証し、さらに変額部分の運用成果をプラス。
顧客が運用期間中に死亡した場合の死亡給付金も、当初払い込んだ保険料相当額を外貨建で最低保証。
オレ、ワカラナイ
また、金融庁は手数料の不透明性についても指摘しています。
保険会社は、主に顧客の運用資産から販売手数料の原資を差し引いており、顧客から直接徴収していない。
このため、顧客は、どの程度の販売手数料を保険会社が金融機関代理店に支払っているか見えない状況。
国としても問題視はしているということですね。
この点、シンプルな保険なら、少なくとも手数料をごまかされる余地が少なくなります。
なので、特約もほとんどつかない、シンプルな保険を選びましょう。
たとえば生命保険なら、掛け捨ての定期保険を短い期間で見直すか、収入保障保険あたりがシンプルで合理的な商品です。
まとめ:保険の使い方をマスターしよう
それでは、今回の記事のまとめです。
- 保険の目的は「リスクのコントロール」
- 少額の損を確定して、甚大な損を回避
- 保険で備えるべきリスクは3つ
…めったに起きない、起きたら貯金じゃ対応できない、いつ起きるか分からない - 自分で100%説明できる保険だけ選ぶ
保険はあくまでリスクコントロールの道具・手段です。
入れば必ず不安を解決してくれる万能薬ではありませんが、使い方次第では頼りになるヤツです。
今回紹介した内容をしっかり確認して、上手に保険を使いこなせる保険マスターになってくださいね!
最後まで読んでくれてありがと!
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