入院したら食費や差額ベッド代がかかるので、医療保険に入っておくと安心ですね
こんなセールストークを受けるかもしれませんが、スルーでOKですよ
確かに、食費や差額ベッド代は保険証がききませんし、高額療養費の対象外です。
でも、だからと言って医療保険が有効ということにはなりません。
入院で必要になる費用
入院すると、いろんなお金がかかりますよね。主な費用は、
- 食費
- 差額ベッド代
- 医療費(保険適用)
- 医療費(保険適用外)
などですね。
今回は、①食費と②差額ベッド代を取り上げます。
食費は入院してもしなくても必ずかかる
「入院の食費」から「普段の食費」を引き算すれば、「入院によって増えた食費」が分かります。
これを踏まえた上で、「入院の食費」について説明します。
入院による食費の自己負担
入院による食費の自己負担は、1食460円です(低所得世帯などはもっと安い)。
3食で1,380円ですね。1か月入院したとして、かける30日で41,400円の自己負担が増える…結構高いですね!
…というのは、もちろんウソです。
なぜなら、普段の食費も1か月分浮くからです
たしかに…!
考えてみたら当たり前の話なんですが、入院で1か月41,400円の食費がかかりますよ!と言われたら、41,400円が今の生活費にプラスでかかると思ってしまいませんか?
仮に単身者で食費が月3万円だとしたら、差し引き「11,400円」が普段よりも増えた食費です。
入院で食費が安くなる人もいる
しかも、食費が月3万円というのは自炊をがんばってる人ですよね。
もし3食コンビニだぜ!って人なら1日1,500円以上かかることもあるでしょう。
その場合、入院した方が食費は逆に安くなります 笑
つまり、「入院による食費は一律」なのに対し、「普段の食費は人それぞれ」なので、結果的に入院による『実質』の食費自己負担額も人それぞれだということです。
少なくとも、1,380円×30日=41,400円の全額が普段の生活費にプラスされるというのは明らかに間違いです。
「自分の普段の食費って、1食460円より高い?低い?」と考えてみましょう。
差額ベッド代の支払いは拒否できる
差額ベッド代は公的保険の対象外→民間の医療保険が必要です!
という安易なセールストークが横行しがちですが、これもスルーしましょう。
差額ベッド代の支払いは正当に拒否できるからです。
以下に、差額ベッド代の支払いが拒否できる理由と、「そうは言っても拒否しにくいよね…」という時の対処法を書きます。
差額ベッド代の支払いが拒否できる場合3つ
2019年3月5日付けの、厚生労働省通知(保医発0305第6号)に、病院が差額ベッド代を取ってはいけない場合が3つ例示されています。
- 同意書を取っていない場合
- 治療上の必要がある場合
- 病棟管理の都合で差額ベッドを使わせた場合
(通知内で、差額ベッド代は「特別療養環境室に係る特別の料金」と表現されています。16ページ目の真ん中あたりに記載あり。)
たとえ差額ベッドを使っても、差額ベッドを使用する旨の同意書にサインしなければ、差額ベッド代は払わなくてOKです。
同意書には「差額ベッド代の料金」が明記されてないとダメです。
また、同意書を書く前に、病院側が「この同意書は差額ベッド代を払ってもらうためのものだからね」と説明責任を果たしてなければ、たとえサインしたとしても払わなくてOK。
これも通知に書いてあります。
特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
ただし、実際のところはサインしてしまうと支払いを免れるのは難しいかな、と思います。
病院側としても入院の手続きはバタバタすることもあるでしょうし、病院で働いている人も人間なので、「明確かつ懇切丁寧な説明」が現実問題としていつでもできるか、というのは疑問です。
とは言え、だから患者側に差額ベッドを払わせて良い理由にはなりません。
「お金がないので差額ベッド代は払いません」とキッパリ拒否して、サインしないようにしましょう。
たとえば、救急で症状が重篤なため絶対安静!とか、感染症にかかるかも…みたいな患者は、個室での治療が必要です。
このような治療上の都合で差額ベッドを使用しても、支払う必要はありません。
治療上、差額ベッドを使用する必要がある場合も、通知書に例示されてます。
- 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
- 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
- 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者
- クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
あくまで例なので、これ以外でも治療上の必要がある場合はもちろんあります。
治療上必要な場合は、差額ベッド代払わなくていいのね~
「いま個室しか空いてない」と病院に言われて、仕方なく差額ベッドを使った場合も、支払わなくてOK。
通知には、次のように書かれています。
特別療養環境室以外の病室の病床が満床であるため、特別療養環境室に入院させた患者の場合
差額ベッド代が払えないなら入院拒否?
もし、「差額ベッド代を払わないなら他の病院へどうぞ」と言われたら困りますよね。
そんな病院は医療機関として最悪ですが…
これも通知内で「差額ベッド代を払わないと入院させないような病院は保険医療機関として不適切」としています。
患者が事実上特別の負担なしでは入院できないような運営を行う保険医療機関については、 患者の受診の機会が妨げられるおそれがあり、保険医療機関の性格から当を得ないものと認められるので、保険医療機関の指定又は更新による再指定に当たっては、十分改善がなされた上で、これを行う等の措置も考慮すること。
要は、そんな病院は保険医療機関として認めないよ、という趣旨です。
保険医療機関の指定を受けないと「保険診察」ができなくなるので、病院は事実上運営ができなくなります。
公務員の力を借りましょう
自分で個室を希望する場合は、もちろん差額ベッド代を払ってくださいね。
でも、同意もなしに勝手に差額ベッドを使わされた場合は、きっぱりと支払いを拒否しましょう。
この記事で何度も引用している厚生労働省通知(保医発0305第6号)のPDFデータをスマホに保存しておくなり、印刷しておくなりしておき、それを根拠に拒否してください。
でも、病院は敵ではありませんので、敵対するような言い方をするのはやめましょうね。
でもいざその場面になったら、自分で言うのはちょっと…
自分で拒否するのは角が立つかも…という方は、通知の受け手である「地方厚生局の医療課」に相談するのもアリです。
地方厚生局の医療課の職員は、病院を指導する立場の国家公務員ですね。
公務員は根拠があることについてはきちんと対応できます。
差額ベッド代のように、厚労省から通知が出てる内容ならしっかり対応してくれるはずですよ。
- 北海道厚生局:011-796-5155
- 東北厚生局:022-206-5216
- 関東信越厚生局:048-740-0815
- 東海北陸厚生局:052-228-6193
- 近畿厚生局:06-6942-2414
- 中国四国厚生局:082-223-8225
- 四国厚生局:087-851-9502
- 九州厚生局:092-707-1123
まとめ:食費・差額ベッド代と医療保険の必要性は別の話
それではまとめです!
- 食費は入院に関係なくかかる
- 差額ベッド代は拒否できる
このため、食費と差額ベッド代を引き合いに出した医療保険のセールスはスルーでOKですね。
とは言え、入院でかかるお金は、「高額療養費の自己負担分」もありますね。
次回以降はその辺りからアプローチしてみることにします。
高額療養費があれば医療保険は要らない?→要らない。貯金しよ。
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最後まで読んでくれてありがと!