元公務員で1級FPの岩崎です。
今回は、公務員の可処分所得がテーマです。
可処分所得(かしょぶんしょとく)とは、要は「手取り=使えるお金」のことです。
よく給与の8割が手取りと言われますが、これはあくまで目安で、年収が高いと7割くらいになったりもします。
稼げば稼ぐほど、税金や社会保険料も高くなるからです。ジレンマですね。
そのため、
- 手取り増えてなくない?
- むしろ手取り減ってない?
なんてことが起こるんですね。
ふむふむ。使えるお金を増やすには、年収を増やすだけじゃダメってことか。
そうだね。可処分所得を増やす必要があるんだよ。
ということでこの記事では、
- 公務員の可処分所得の計算方法
についてお話しします。
公務員の可処分所得(手取り)の計算式
可処分所得は、次の計算式で出せます。
- 年収 − 所得税 − 住民税 − 社会保険料
計算方法を解説しつつ、以下の世帯でシミュレーションもしてみます。
なお、給与収入の「719万円」は、下の記事で推計した金額です。
公務員の所得税と住民税の計算
まずは税金から見てみましょう。
税金は、年収にそのまま税率をかけて計算するのではありません。
そのまま税率をかけると税金が高くなってしまうので、年収からいろいろと差し引けるものがあります。
この、差し引けるものを「控除(こうじょ)」といいます。
流れとしては、
という4ステップで計算します。
所得税と住民税の2種類がありますが、どちらも同じような流れで計算できます。
- 所得控除
→税率をかける前の金額から引く - 税額控除
→税率をかけた後の金額から引く
税額控除は税金をダイレクトに安くしてくれます。
給与所得控除を引く
まず、年収から「給与所得控除」を引きましょう。
これは経費的なもので、公務員の方は全員、給与所得控除を使えます。
給与所得控除の額は、年収に連動して増減します。
年収と給与所得控除の表を載せておきます(黄色マーカーはシミュレーション世帯の該当部分)。
年収 | 給与所得控除 |
---|---|
180万円超 〜 360万円以下 | 年収×30%+18万円 |
360万円超 〜 660万円以下 | 年収×20%+54万円 |
660万円超 〜 1,000万円以下 | 年収×10%+120万円 |
その他の所得控除を引き、課税所得を出す
他の所得控除も引いていきましょう。
すべての控除を引いた後の額を「課税所得」といいます。
所得税と住民税で、控除額が違うこともあります。
少々正確さを犠牲にするなら、全員使える基礎控除と社会保険料控除のみで計算しても良いと思います。
一般的な所得控除は15種類ありますが、一部を表にしておきます(黄色マーカーはミュレーション世帯で使える控除)。
控除名など | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
基礎控除 | 38万円 | 33万円 |
配偶者控除 | 38万円 | 33万円 |
社会保険料控除 | 年間の社会保険料 | |
iDeCo掛金 | 年間の額掛額 |
課税所得に税率をかけて、仮の税額を出す
ふいー、これで「かぜいしょとく」ってやつが計算できたぞ~~
課税所得に税率をかけて、仮の税金額を出してみよう!
- 住民税
税率:10%(例外もあるが、無視して良いレベル)
均等割:基本料金のようなもので、5千円程度(自治体による) - 所得税
税率:課税所得が高いほど税率も高い - 復興特別所得税(2037年まで)
税率:所得税額の2.1%
課税所得と所得税率の表を載せておきます。
所得税率のカッコ内は、復興特別所得税との合計税率です。(黄色マーカーはシミュレーション世帯の該当部分)。
課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% (5.105%) | 0円 |
195万円超 〜 330万円以下 | 10% (10.21%) | 97,500円 |
330万円超 〜 695万円以下 | 20% (20.42%) | 427,500円 |
仕上げに税額控除を引く
税金計算の仕上げ段階です。
ここまで計算した額から「税額控除」を引くと、実際に納める所得税額が出せます。
身近な税額控除を表にしておきます(シミュレーション世帯は該当ナシ)。
控除名など | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
住宅ローン 控除 | ローン残高 0.7% (上限あり) | 所得税から 引き切れない額 (上限あり) |
ふるさと 納税 | なし | 寄付金−2,000円 所得控除分除く |
ふるさと納税の税額控除は分かりにくいんですが、所得税や住民税の「所得控除」で引ききれなかった金額を控除するイメージです。
「寄付金マイナス2,000円の税金が安くなる」くらいの理解で十分です。
なお、住民税のみ「調整控除」という税額控除がありますが、少額なので本記事では省略します。
公務員の社会保険料の計算
は~~つかれた
おつかれさま!あとは社会保険料を出せば終わりだよ。
公務員の社会保険料の種類
公務員の社会保険料は、次の5つです。
- 厚生年金の掛金
…会社員と同じ年金 - 退職等年金の掛金
…公務員のみの年金 - 健康保険の掛金
…病院で3割負担になるやつ - 介護保険の掛金
…40歳以上のみ - 福祉事業の掛金
…人間ドック助成など
公務員の社会保険料の掛金率
5つの社会保険料は、それぞれ掛金率が決まってます。
社会保険 | 掛金率 |
---|---|
厚生年金 | 9.15% |
退職等年金 | 0.75% |
健康保険 | 4.75% |
介護保険 | 0.88% |
福祉事業 | 0.08% |
合計 | 15.61% |
これは大阪市の2022年度の例(組合員負担分)です。
共済組合によって掛金率が少し違うこともありますし、年度によって改正されたりします。
掛金率×標準報酬月額で計算する
掛金率に「標準報酬月額」をかけて、さらに12をかけて年額を出します。
「標準報酬月額」とは「おおよその月収」のことで、毎年9月に決まります。
等級表と呼ばれる早見表を見ると、標準報酬月額のイメージがつかめるので、自分の共済組合の等級表をチェックしてみましょう。
「厚生だより」や共済組合のホームページに載ってたりします。
等級表の例>>>地方公務員の共済連合組合の早見表
また、本来ならボーナスは別で計算しますが、ここでは単純にボーナス込みの年収を12で割ってしまいましょう。
公務員の可処分所得(手取り)の計算結果
ねえもう終わり?もう終わりだよね??ねえ?
うん。ここまでの計算結果をまとめてみよう。
計算の材料がそろったので、シミュレーション世帯の可処分所得を出してみましょう。
- 年収
719万円 - 所得税
34万5,800円 - 住民税
38万8,700円 - 社会保険料
110万5,000円
①ー②ー③ー④で、可処分所得は535万500円
「手取りは年収の8割」で計算すると、575万2,000円となり、今回のシミュレーションより40万円くらい多いですね。
ざっと知りたい場合は年収の8割で計算してしまっても良いと思います。
ですが、所得が高い方は8割だと多めに出ることがあるので、注意しましょう。
まとめ:可処分所得を把握し、できれば増やそう
可処分所得を把握しておけば、お金を使うときの指針になります。
また、可処分所得を増やすことも大切ですね。
その時の注意点は、増収よりもまず節約や節税から行うことです。
増収だと税金や社会保険料も増えますが、節約ならまるまる可処分所得が増えますからね。
このあたりのことは「30歳の地方公務員が年収公開→手取435万でした」という記事でもくわしく書いてますので、ぜひ読んでください。
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