今や2人に1人はがんになる時代です。不安ですよね…がん保険で備えましょう!
…こんなセールストークを聞いたら要注意。という話です。
「50%はガンになる」ってすごくキャッチーですよね。不安を煽るには効果十分なフレーズ。
でもこれって、「完全にウソ」ではないけど「そこそこウソ」なんです。
2人に1人はガンになるってよく聞くけどナァ…
数字のマジックがかかってるんだ。詳しく説明していくね。
真実を知れば、「公務員にとってガン保険の必要性は低い」ことが分かりますよ。
ガンになる確率を統計から知ろう
本当に2人に1人はガンになるのか?
まずはここを統計データから洗ってみましょう。
「国立がん研究センター」ってご存知ですか?
その名のとおり、ガン治療や研究の拠点となる国の機関です。
その国立がん研究センターが、一般の方向けに「がん情報サービス」というサイトを運営しています。
このサイトの「最新がん統計のページ」でガンになる確率をチェックしてみましょう。
ガンになる確率は男性62%・女性47%
国立がん研究センターの2014年のデータによると…
生涯でがんに罹患する確率は、男性62%(2人に1人)、女性47%(2人に1人)。
やっぱり2人に1人はガンになるっぽいですね。
よーし覚悟はできてるか??
いやちがうのよ。もう少し聞いてほしい。
この男性62%・女性47%という数字には、ある重要な視点が欠けてるんです。
それは、「年齢」です。
確かに一生涯では2人に1人はガンになりそうですが、年齢も含めてデータを見直すと、まったく違う結果になるんです。
60歳になるまでにガンになる確率→数%
今の年齢から、10年後までにガンになる確率を表にしました。
今の年齢 | 10年後 |
---|---|
20歳 | 0.3% |
30歳 | 0.6% |
40歳 | 2% |
50歳 | 5% |
60歳 | 15% |
70歳 | 29% |
今の年齢 | 10年後 |
---|---|
20歳 | 0.4% |
30歳 | 1% |
40歳 | 4% |
50歳 | 6% |
60歳 | 9% |
70歳 | 14% |
- 今、30歳の人:0.6~1%
- 今、40歳の人:2~4%
- 今、50歳の人:5~6%
どうでしょうか?
どう見ても「2人に1人はガンになる」とはかけ離れた確率ですよね。
つまり、ガンは「歳を取ってからかかる」病気なんです。
それなのに、現役で働いてる人に「2人に1人はガンになりますよー、だからガン保険が必要ですよー」と言うのは正直どうなの?と思います。
たしかに…不安をあおりたおしとるな…
だよね…でもこんなセールストークが横行してるんだ。
公務員がガンで入院したらお金はいくら必要?
あとさ、確率が低いのは分かったけど、実際ガンになった時のお金が心配…
そうだよね。そこも検討していこう。
若いうちは癌になりにくいので、正直なところそんなに心配いりません。
それでもガンになったら不安……いつかガンになるなら結局は医療保険は必要なのでは…
という方のために先に結論を伝えておくと、「きちんと貯蓄してたら対応できる」ので大丈夫。そんなに心配いりませんよ。
医療費・食費・差額ベッド代・先進医療
ガンで入院した場合にかかるお金は、
- 医療費
- 食費
- 差額ベッド代
- 先進医療
などが主なものです。
それぞれいくらかかるか見ていきましょう!
公務員は、共済組合に強制加入してます。
この共済組合の医療保険がめちゃくちゃ強力で、ガンでひと月まるまる入院しても、自己負担額は約2.5万円で済むんですよ。
高給取りの方でも自己負担は約5万円でOK。
実際の金額は共済組合によって異なりますが、いろんな共済組合のサイトを確認したり、公務員世帯の方と話したところ2.5万円~5万円くらいという場合がほとんどです。
この制度は「附加給付」とか「一部負担金払戻金」というもので、扶養家族も対象になるという超頼れる制度なんです。
公務員時代の僕は、こんなこと知りませんでした…
入院時の食費の自己負担額は、1食460円です(2022年度)。
なので、460円×3食=1,380円が1日あたりの自己負担額になります。30日間の入院だと、41,400円の負担ですね。
よくある誤解は「普段の食費+41,400円がかかる」というもの。これ本当に多い間違いなんです…
なぜなら、入院日数分は普段の食費が浮くからです。
本当の自己負担額は、「入院による食費の自己負担額」ー「普段の食費」で出しましょう。
この辺りの話は別の記事になってるよ~
厚労省の資料「主な選定療養に係る報告状況(2018年11月14日)」によると、差額ベッド代の自己負担額は以下の通りです。
- 4人部屋:2,440円/日
- 3人部屋:2,798円/日
- 2人部屋:3,119円/日
- 1人部屋:7,837円/日
平均額なので、実際の金額は病院によって変わってきます。
余談ですが、差額ベッド=個室というワケじゃないのも押さえておきましょう。
ガン治療では、先進医療が不安の種ですよね。実際、普段からよく相談を受けてます。
ガンに係る先進医療は、
- 陽子線
- 重粒子線
主にこの2つです。
では、その自己負担額はいくらか?
中央社会保険医療協議会の先進医療の実績報告(2017年度)によると、
- 陽子線:276万円
- 重粒子線:315万円
これくらいかかってきます。なかなか高額ですね。
ただ、先進医療が実施されるのは、ほんっとうにレアケースなんだということも押さえておきましょう。
ガン患者のうち、何%が先進医療を受けるかというと、
- 陽子線:0.1%
- 重粒子線:0.08%
すごく僅かな確率です。
そもそも現役期にガンになる確率が数%で、そこから0.1%程度の話。
確率的にはめっちゃ低いのね…
不安な気持ちは分かるけど、恐怖で過大に見積もってないか注意したいね。
- 医療費:ひと月25,000円
- 食費:1日1,380円
- 差額ベッド:1日2,440円~7,837円
- 先進医療:276万円~315万円
それぞれの自己負担額が大体分かりましたね。
それでは、平均入院日数でシミュレーションしてみましょう。
ガンの平均入院日数からシミュレーション
ガンにもいろいろありますが、罹患率が高いのが「胃ガン」です。
なので今回は胃ガンを例に見てみましょう。
厚労省の統計データ、平成29年(2017)患者調査の「退院患者の平均在院日数等」によると、
- 胃ガンの平均入院日数:19日
あら。思ってたより短いかも~
あくまで平均だけど1か月も入院しないんだね。
ちなみに、年齢別に見ても1か月いきません。
- 15~34歳:12日
- 35~64歳:13日
- 65歳以上:20日
では、これを踏まえて
- 現役時代(附加給付あり)
- 退職後(附加給付なし)
この2パターンで、平均入院日数の19日間入院(同月内)した場合の自己負担額を試算してみます。
先進医療ナシ | 先進医療アリ | |
---|---|---|
医療費 | 2.5万円 | 2.5万円 |
差額ベッド代 | 15万円 | 15万円 |
食費 | 2.6万円 | 2.6万円 |
先進医療 | ー | 300万円 |
合計 | 20.1万円 | 320.1万円 |
差額ベッド代は一番高額な1人部屋の平均額としました。
もし差額ベッドも先進医療も不要なら、19日入院しても約5万円で済みます。
ここから普段の食費を差し引いたり、共済組合や互助会からの見舞金も加味すると、更に負担額は減ってきます。
医療費自己負担が抑えられてるのは、やっぱり公務員の強みですよね。
先進医療ナシ | 先進医療アリ | |
---|---|---|
医療費 | 9万円 | 9万円 |
差額ベッド代 | 15万円 | 15万円 |
食費 | 2.6万円 | 2.6万円 |
先進医療 | ー | 300万円 |
合計 | 26.6万円 | 326.6万円 |
退職後、附加給付が使えなくなっても、「高額療養費」によって自己負担は軽減されます。
たとえば、「69歳以下」で、「年収370万円〜770万円」くらいの方なら、たとえ月の医療費総額が100万円かかっても、自己負担額は9万円くらいで済みます。
70歳以降は、更に負担額が軽減されます。
退職後に高額所得者でもない限り、だいたいこのレンジに収まるかと思います。
高額療養費については別の記事に詳しく書いてあったよ~
公務員のガン入院時の自己負担まとめ
ここまでを表にまとめてみると…
現役期 | 退職後 | |
---|---|---|
差額ベッド無し | 5万円 | 11.6万円 |
差額ベッド有り (1人部屋) | 20.1万円 | 26.6万円 |
先進医療有り | +300万円 | +300万円 |
1人部屋を使っても、20~30万円あれば、ガンの平均的な入院には備えられそうですね。
先進医療も考えると金額が跳ね上がるんやな。
そうだね。超レアケースだってことを押さえた上でそれでも備えたいか?ってところだね。
先進医療については、YouTubeの「公務員も先進医療には医療保険で備えるべき?」という動画で詳しく解説してるので、そちらを見て検討してみてください。
少なくとも、先進医療を加味しない場合は預貯金で十分に対応可能というのが今回の結論です。
先進医療に備える場合も、
- 先進医療に単独加入できるもの
- 職場の団体保険で特約をプラス
といった方法でなるべく割安に入るようにしましょう。
公務員にガン保険は不要な理由まとめ
それでは今回の記事のまとめです。
- 「2人に1人はガンになる」はウソ
- 現役期にガンになる確率はかなり低い
- ガンになっても長期入院はしにくい
- ガンで入院しても預貯金で十分対応可能
- 先進医療は超レアケース→心配し過ぎないこと
保険勧誘の現場では、いろんなセールストークが繰り広げられます。中でも、「不安を煽る」のは鉄板です!
僕たち人間は不安に弱い生き物ですから…センシティブな意味ではなく、進化の過程で身につけた臆病さを持っているということですね。
でも、「不安だから」という心理状態で保険を選ぶのは悪手です。絶対に入りすぎになっちゃいますからね。
もちろん、僕も人間なので不安になる気持ちは分かります。ガン怖いですよね。
でも、すべての不安に保険で備えるのは無理ですし、少なくともガンは預貯金で対応が可能です。
今回紹介したデータやシミュレーション結果をもとに、ガン保険との付き合い方を見つめなおして欲しいなと思います。
最後まで読んでくれてありがと!
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