公務員専門FPの岩崎です。
この記事では、日常的に保険の見直し相談を受けているFPが、「保険は損を承知で入るもの」という事実をお伝えします。
えっ…損を承知でって…そんな人いなくない??
損だと思ってない人が多いよね。でも保険の本質を知るためにも、まずは「保険は損するもの」だという根拠を知って欲しいんだ。
この記事は、保険を否定するものではありません。
「保険は損を承知で入るものなんだ」と知れば、保険を上手に使えるようになるので、ぜひ最後までお読みください。
保険料とは?保険金とは?知っておけば損しにくい
保険に入ると、保険会社にお金を払いますよね。
この「支払うお金」を『保険料』と言います。
- 保険料=保険会社に払うお金
また、保険会社からお金がもらえることがあります。たとえば、医療保険に入っていて、入院した時の入院給付金などですね。
この「もらえるお金」を『保険金』と言います。
- 保険金=保険会社からもらえるお金
「保険料」と「保険金」…ややこしや…
ほんとだよね…なんとか頑張って覚えておいてね…
保険会社の立場で考えると分かりやすい
さて、ここで保険会社の立場になって「自分が保険会社の社長だったら…」と考えてみましょう。
もしも『保険料の金額=保険金の金額』だったら、自分の会社はどうなると思う?
えっと、うーんと、
……
にっこり(わかりません)
「加入者から集めたお金」と「加入者に払うお金」が同額になるので、もうけが出なくなります。
でも、保険会社が払うお金って、加入者への保険金だけじゃありません。
自社の営業マンに給料を払ったり、CMを流すためテレビ局に広告費を払ったりしないといけませんよね。
入ってくるお金よりも出て行くお金が多い、そんな状況が続いたら…倒産してしまいます。
倒産ヤダ…こまる…
だよね。なので…
保険料(集めたお金)>保険金(払うお金)
となっていないと、やっていけなくなります。
つまり、保険金として払うお金よりも、たくさんの保険料を集めておく必要があります。
具体的には、保険料を『純保険料』と『付加保険料』に分けて、集めます。
- 純保険料
…保険金の支払いにあてる - 付加保険料
…事業費(給料や広告費など)にあてる
こうすれば、保険会社は倒産せずにすみそうだね。
ふいー、ヨカッタヨカッタ。
加入者全体としては必ず損をするのが保険
ではここで、視点を僕たち加入者側に戻しましょう。
保険料>保険金
となっているということは、加入者側から見ると、損ですよね。払うお金の方が多いわけですから。
でも、保険金もらえる人もおるやろ?
そうだね。でも、保険金をもらえない人の方が圧倒的に多いんだ。
つまり、加入者目線で見ると、
「保険料<保険金」な人が少数いるけど、
「保険料>保険金」な人が圧倒的多数なので、
全体としては、「保険料>保険金」というように、必ず加入者側が損する仕組みになっているんです。
この点では、全体としては胴元が必ず勝つギャンブルの構造によく似ていますね。
純保険料と付加保険料について
さて、上で出てきた『純保険料』と『付加保険料』について、もう少しだけ深掘りしてみます。
純保険料の決め方
純保険料は、保険金の支払いにあてられます。
保険会社としては「保険金の金額=加入者に将来払うお金」を計算しておく必要がありますね。
具体的には、統計データをベースに純保険料の金額を計算します。
たとえば、「死亡保険の純保険料は、死亡率をベースに決める」、「自動車保険の純保険料は、事故率をベースに決める」といった具合です。
そしてここがポイントですが、統計データをもとに計算するということは、保険会社による差が出にくいということです。
なので、同じ保障内容の保険なら、純保険料の金額も、各保険会社で同じくらいになります。
ここで「…んん?」とピンときた方もいるかもしれません。
にっこり(べつにピンときてないけど)
実際は同じ保障内容でも、保険会社によって「保険料」に差があるんです。
この差は、もうひとつの保険料である「付加保険料」によって生まれます。
付加保険料の決め方
付加保険料は、保険会社の事業費(給料や広告費など)にあてられます。
保険料と名付けられてますが、加入者側から見ると、まんま手数料ですね。
2005年度までは、付加保険料は金融庁が検証していました。
でも、2006年度からは、金融庁の検証なしで、各保険会社が自由に付加保険料を決めることができるようになりました(事後モニタリング制度への移行)。
なので、今では各保険会社が自由に付加保険料(=手数料)を決めています。
そして、ここがポイントと言うか問題点なんですが、付加保険料を開示している保険会社は2018年12月現在で、ほとんど存在しません。
保険料自体はもちろん分かりますが、それを構成する「純保険料」と「付加保険料」の割合はブラックボックスになっています。
加入者側からすると、「払うお金のうち、手数料がいくらか分からない」ということです。
これって正直、かなりアンフェアだと思わない?
おもう!なんとかしておくれ!
保険業界も変わっていくことに期待しつつ、現状では自衛でなんとかしましょう…
純保険料=実際の保険金支払額にはならない
「純保険料は、保険金の支払いにあてられます」と書きましたが、厳密にはちょっと違います。
目的としては、保険金の支払いにあてるために純保険料を集めるんですが、「少し多め」に集めるんです。
なぜなのか
これも、保険会社の社長さんになって考えてみよう。
純保険料は統計データを元に計算するんでしたね。
仮に50歳の人の死亡率が統計データ上1%だったとしましょう。でも、実際の死亡率は1%から上下にぶれるかもしれません。
もし1%で計算していて、実際の死亡率が2%だったら、差の1%分は保険会社がポケットマネーで埋め合わせる必要があります。
なので、安全策を取って統計データよりもちょっと上乗せしておこう、となるのが普通の経営判断です。
つまり、
「純保険料=実際の保険金支払額」と完全にイコールにはならず、
「純保険料>実際の保険金支払額」になります。
理念としては「純保険料=保険金支払額」であっても、実際のところは違うんですね。
加入者側としては、統計データからどれくらい上乗せしてるの?と気になりますが、これも分からないのが現状です。
なんてこったい
まとめ:保険に入るのは損だけど上手に使えば武器になる
さて、今回は「保険料」を切り口に話しました。まとめておきましょう。
- 保険は加入者全体としては損する
- 純保険料は、統計データで計算
…保険会社による差はあまりない - 付加保険料は、保険会社の事業費
…保険会社によって差が出る - 純保険料も上乗せして計算される
人生に不安は付きものですが、アレも不安だ、コレも不安だ、ぜんぶ保険に入っとかなきゃ…というのは、損する可能性を自分でどんどん広げているようなものです。
不安を解消したくて保険に入ったはずなのに、それでは本末転倒ですよね。
でも、『保険はギャンブル。どうせ『賭け』なら上手に賭けよう!』という記事でもお伝えしてますが、保険は上手に使いさえすれば、超強力な防具になります。
保険料はコストだという認識をしっかり持って、保険と上手に付き合っていきましょう。
最後まで読んでくれてありがと!