こんにちは。公務員専門FPの岩崎です。
前回の記事のラストで、「もし高額療養費がなくなったら、民間の医療保険は要るのか?」という問題を取り上げました。
もしまだ読んでなければ、ぜひ読んでくださいね。
今回は、「高額療養費の有無は、医療保険の価値とは無関係」とい話をしたいと思います。
高額療養費が無くなっても、医療保険金は増えない
前回の記事のおさらいになりますが、たとえば、今月丸々入院して医療費の総額が100万円かかったとしましょう。
まずは3割負担で30万円を窓口で支払います。
一般的な所得の方なら、約22万円の高額療養費が払い戻されて、自己負担は約8万円になります。
(分かりやすくするため、万円未満は切り捨てています)
もし高額療養費が無くなったら、22万円はもらえなくなりますね。
22万円も減るなら、やっぱり医療保険が要るのでは…
落ち着いて考えてみよう。医療保険の価値が上がるわけじゃないんだよ。
たしかに、22万円減るのは痛いですよね。
では、医療保険に入っていれば、この22万円は補てんされるのか?というと、そんなことはないんです。
もしも、
ウチの医療保険は、高額療養費が無くなった場合にはその金額(上の例だと22万円)を上乗せしますよ〜
という保険があったら、確かに検討の余地があります。
でも、残念ながらそんな医療保険は、ほぼありません。
(実費給付の保険も一部ありますが、給付上限があります)
つまり、高額療養費があってもなくても、医療保険の価値(もらえるお金)は変わらないんです。
高額療養費と医療保険を実際に計算してみよう
言葉だけでは分かりにくいので、実際に計算してみますね。
以下の条件で計算します。
- 入院日数:20日
- 医療費総額:100万円
- 高額療養費:22万円
- 医療保険でもらえるお金:5日目から1日1万円(16万円)
医療保険 | 高額療養 | 計 | |
---|---|---|---|
高額療養費あり | 16 | 22 | 38 |
高額療養費なし | 16 | 0 | 16 |
高額療養費があってもなくても、医療保険でもらえる金額は同じ16万円ですね(黄色マーカー)。
このように、医療保険のパワー(もらえるお金)は、高額療養費に左右されないんだ、ということは押さえておきましょうね。
もちろん、医療保険の保険金があれば、見かけ上の自己負担は減ります。
でも、「保険金がもらえる」=「保険料というコストを払っている」ので、そこも含めて実質的な自己負担がいくらなのか?を検討する必要があります。
保険料のコストってよく分からない…という方は次の記事を読むとよく分かりますよ。
医療保険のお金は自由に使えなくなる
さて、高額療養費があってもなくても、医療保険の価値は変わらないことをお伝えしました。
もうひとつ、医療保険の厄介なところをお伝えします。
それは、お金の「何にでも使える」機能を無効化してしまう、ということです。
たとえば、月に1万円の医療保険に入っていた場合、30年で360万円の保険料を支払います。
その30年の間、事故や病気もなく、健康に過ごせたとしましょう。これ自体はとても幸せなことですね。
ですが、払った360万円は戻ってきません。もし貯金していたら、家のリフォーム代にしたり、家族で海外旅行代にだって行けたでしょう。
医療専用マネーにすることの妥当性
このように、医療保険として払ったお金は、病院にかからないと機能しなくなります。使い道を限定されてしまうんです。
本来のお金ってそうじゃないですよね。
それこそ保険料だったり、教育費だったり、旅行代だったり、無数に使い方があります。
医療保険に入るということは、無数の可能性を放棄して、医療専用マネーにするということです。
医療技術の発達に伴い、入院日数は減少しており、今後も減少傾向は続くと思われます。
そんな時代を生きていく上で、医療専用マネーにすることの妥当性を、きちんと考えておきましょう。
使い道が限定されちゃうのは、たしかに不便かも…
まとめ:医療保険の価値は高額療養費と無関係
それでは今回のまとめです。
- 高額療養費の有無は、医療保険の価値と無関係
- 保険料というコストを確認しておこう
- お金の「何にでも使える」機能は重要
保険の知識は、きちんと押さえておかないと間違ったセールストークにはまってしまうことがあります。
もし「高額療養費がなくなったら困りませんか?」というセールスを受けても、「保険金が増えるわけじゃない」という点を意識し、妥当性を検討しましょうね。
最後まで読んでくれてありがと!
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